産科 Obstetrics
切迫早産治療
切迫早産
妊娠22週0日~妊娠36週6日までの出産を早産と呼び、早産になりかかっている(一歩手前の)状態を切迫早産といいます。全分娩数の5%程度におこるというデータがあります。
定期的な腹痛(陣痛が始まっています)やお腹の張り・出血・破水感などがみられたら切迫早産のおそれがあります。すぐに受診してください。自覚症状がなくても内診や超音波検査で子宮口の開き、頸管長の短縮などの切迫早産の兆候がはっきりみえる場合は即入院になることもあります。
原因はさまざまで、解明されていない部分もあります。
【母体側原因】
①絨毛膜羊膜炎:
膣内の細菌が増え炎症が子宮頸部に進むと、子宮収縮を促す物質が産出されお腹が張るようになり、子宮口が熟化し開きやすくなります。
炎症が子宮内まで進んだ状態が絨毛膜羊膜炎です。
②子宮頸管無力症:
体質によるもので、陣痛を伴うことなく子宮頸管や子宮口が開いてしまう病気です。
③合併症(妊娠高血圧・糖尿病など)
④子宮の異常(子宮筋腫や奇形)
⑤高齢や喫煙者はリスクが上がるといわれています。
【子宮内原因】
①多胎妊娠
②羊水の異常(過少、過多)
③前置胎盤
切迫早産が特に重症化する機序は、ひとつの要因ではなく様々な原因が重なっておこると考えられています。その原因ひとつひとつに対して細やかな治療を施しながら、あかちゃんが胎外生活に適応できる時期(35週終わり頃)まで妊娠を継続させることが大切です。
【主な治療】
①安静
②子宮収縮抑制剤の投与(内服および点滴)
③抗生剤による膣洗浄
④漢方療法
⑤子宮頸管縫縮術
これら5つの方法の中でも特に当院独自の取り組みとして、子宮縫縮術の向上や工夫をおこなっています。通常はシロッカー法(内子宮口を縛る)またはマクドナルド法(子宮頸管の内部を外側から縛る)のどちらかひとつを選択しますが、当院ではより子宮口をかたく閉ざすために、『二重シロッカー術』や『シロッカー&マクドナルド術』をおこなうことがあります。
さらに、手術の刺激がかえって早産を助長するという理由から通常は、26週頃が限界とされるこれらの手術を32週までおこなっています。
これらオリジナルの手術によって、妊婦さんは長期間の安静臥床を強いられる苦痛から解放された上、切迫早産の状態でも自宅で過ごせる期間が持てるようになりQOL(Quality Of Life:生活の質・ここでは妊娠生活の快適性)の向上につながっています。